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おもしろおかしや旅のコラム 


 icon オトボケばあさん― フランス(南フランス)



母と1ヶ月に渡ってイベリア半島を旅し、南フランスのトゥルーズにたどり着いた。
そして、フランス硬貨に両替をしようと銀行に立ち寄った時のことであった。

銀行は何故か閉まっており、隣接されたキャッシュデスペンサーと両替機のコーナーに行くと、 70歳過ぎと思われるおばあさんが私に英語で話しかけてきた。

「両替したいんだけど、出来ないの。どうしてかしら? 困ったわ・・。
市内観光ツアーに参加したいんだけど、フランス紙幣じゃないとだめだって言われたの。」

おばあさんは目に一杯涙を溜めて、とても悲しそうな表情で私たちに訴えた。

両替機を調べると、確かにクローズされており使用することが出来ない。
機械の前面にフランス語でなにやら書いてある。
lundivendredi○○○」
samedi、dimanche○○○」
うん?! lundiって英語で言えばマンディだっけ?
フランス好きを自負する自分だが、基礎フランス語すら(;¬_¬) ぁ ゃι ぃ・・・・。
しかし、日本と同様ここれはきっと何曜日から何曜日までが営業日であって、
何曜日が休止と言うことではないか?
今日は土曜日だが、もしや・・・・・。

「土曜日ってフランス語で何て言うか知ってる?」
と だめもとでおばあさんに聞いてみることにした。

すると「samedi」とすぐさま答えが返ってきた。
なに〜〜〜?!フランス語出来るんじゃない!!

試しに「ここに何て書いてあるかわかる?」
とおばあさんに尋ねると、
「月曜日から金曜日が営業日で、土日は休止」と再びすぐさま答えが返ってきた。

じゃあ、なんで私に
「 両替したいんだけど、出来ないの。どうしてかしら?」
と尋ねてきたのか???

こっちが聞くならまだしも・・・不思議だ・・・・・・。(;^_^A


両替機の横にはクレジットカードのキャッシュデスペンサーがある。
おばあさんに「両替機はだめだけど、クレジットカードで出来ますよ」 と言うと
「どうやってやるのかわからない」
とおばあさんは再び悲しげな表情で私に言った。

「OK、じゃあカードを、ここに入れて」
とおばあさんに伝えると、小さなリュックからカードを取り出し、
「お願いあなたがやってくれる?」
と私にそれを差し出した。
げっ、大切なカードを見も知らぬ私に渡していいの?

カードを機械に差し込むと、暗証番号を入力してくださいと指示が出てきたので、
さすがに他人の暗証番号を聞くことは出来ないと、
「暗証番号をここに打ち込んでください」
とおばあさんに伝えると、
「わからない・・・・。忘れたわ」
と困惑した表情で言った。

「それがわからないと両替できないの。
自分の誕生日とか郵便番号とかそういうので設定した覚えない?」
とおばあさんに尋ねると、
「誕生日で設定したかもしれない」と自信なさげにつぶやくように言った。
「誕生日はいつ?」
「○月○日」
その月日を入力するが、エラーとなってしまった。
確かカードは数度エラーを重ねると、使用不可になってしまうので、
それを伝え、カードで両替することを諦めるように伝えた。

「どうしよう・・・明日モロッコ行きの飛行機に乗るから、市内観光ツアーに参加できるのは、 今日だけなの。
午前中のは終わったから、あと午後1時出発のを逃すと行くことが出来ないの。」
もう今にも泣きそうに目をウルウルさせて私に訴えかけてきた。

こんな調子で一人旅で大丈夫なのか?!
それにモロッコ!?
現地の人間にカード渡して、下ろしてくれなんていいかねない・・・。
人を疑うことを知らないのか、半ボケなのか・・・・。

「貴方が泊まっているホテルで両替は出来ないの?」と
尋ねると「出来ない」と言う。
それならば後は、レートは高いが街の両替屋を利用するしか手立てがない。

それをおばあさんに伝えると、
「どこにあるのかわからない・・。もう時間がない・・どうしたらいいのかしら?」と
私の目を見て訴えかけるように言った。

母が「可愛そうだからどうにかしてあげて」と横から口を挟んできた。
母曰く、「この旅の間中、いろんな人に助けられた。だからその親切を誰かに返してあげましょう」と 言う。
うん、確かにそれも一理ある。


じゃあ3人で両替屋を探しましょう!とおばあさんに伝えると
目を輝かせ「まあ、なんて親切なんでしょう」
と笑みを浮かべで喜びの表情で言った。
母は案内するかのように、おばあさんの手を取り、二人して私の後に従った。

ふと後ろを振り返えり、二人の様子を見ると
手を引いて導いているはずの母が、どう見てもおばあさんに導かれるかのごとく
おばあさんの1歩後ろを小走りで従っている。


おばあさんとは言え、さすが白人。
老いていても身長は優に170cmはあるだろう。
身長158cm足らずの母とは、歩幅が違う。
結果母は、おばあさんに引きずられるかの如く歩く羽目になってしまったのだ。

それに白人は日本人と比べ周知の如く、老けて見える。
このしゃきしゃきした歩きは、母よりも数段若いのかも知れない。

両替屋を探す道すがら、おばあさんといろいろ言葉を交わした。
なんでも彼女はドイツ人であり、カナダ人のご主人と結婚後その地でずっと暮らしているそうである。
ご主人が亡くなった今では一人で世界中を旅しているそうだが、
旅した国は数知れず、なんと彼女は世界を股にかけるスーパーおばあちゃんなのであった。

明日行く予定の「モロッコ」は初めての国であるようだが、こんな調子でいったい大丈夫なのか?!
他人事とは言え、心配である・・・。

「今まで怖い目にあったことはないの?」と尋ねると、
たくさんあると言う。

チェコのプラハでは法外な金額をタクシーで請求され、それに抗議すると車をロックされ、 どこか見知らぬ場所に連れて行かれ、払うまで車外から出さないと脅かされたそうだ。
仕方なしにその法外な金額を支払い、無事に市内のホテルに向かったそうである。
その後警察にそのことを訴えたが、警察もグルであり、全く相手にされなかったとか・・・。
おばあさん曰く、チェコの警察はマフィアだと・・・。(;^_^A


ひぇ〜こわっ・・・。
大体ヨーロッパで多発する金銭をめぐるトラブルに巻き込まれるのは、
体力も抵抗力もない老人が多い。
まして、このおばあさん、こんな調子じゃ先が思いやられる・・・・。

そして目指す両替商を見つけ無事目的を果たし、
ツアー申し込み場所であるツーリストインフォメーションまでおばあさんを送り届けることにした。

申し込み時間ぎりぎりセーフでなんとか無事参加費を支払い、
おばあさんは安堵のため息と共に
「本当にありがとう!!本当に貴方たちは親切だわ」
と顔一杯に笑みを浮かべ感謝の言葉を私たちに言った。

出発時間まで一緒にいてあげようとインフォメーション近くのベンチに腰掛ると、おばあさんは参加費支払いのときから手に握っていた財布をビニール製のリュックにポィっと投げ込んだ。
その財布にはクレジットカードも入っている。
リュックの口はただ紐で絞るようになっている簡単なものであまりにも無用心である。
その一部始終を隣のフランス人の若い男が見ていたので、
「そんなところに入れたら危ないですよ、 隣の男がずっと見てますよ。用心してください」
と伝えた。

「そうね、 危ないかもね」
と言うものの気に留める様子は全くない。
これじゃあ「お金持って行ってくれ〜!!」と言っているようなものだ。
全く無用心もいいとこだ。


そして、出発時間10分前、ツアーバス前までおばあさんを見送り、お互いに旅の無事を祈りつつ別れた。

母は「これでやっと、自分が受けた数々の親切を誰かに返すことが出来たわ」と言った。
確かに旅をしていると誰かに頼らざる得ないことがしばしばある。
それをその人に返すことができなくとも、どこかで同じように困っている人に手を差し伸べることによって その恩に報いることが出来るのだ。

その後、モロッコへ旅し、あのおばあちゃんが無事に帰国出来たのかは私に知る由もない。
Good Luck おばあちゃん!!

教訓:
人は誰かに頼らなければならない時がある。
そしてやがて同じように困っている人がいたら、同様に手を差し伸べよう。
 

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