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おもしろおかしや旅のコラム 


 icon 幻の村 ― フランス(プロバンス)


 


旅で知り合ったアメリカ人が、「アルル」からそう遠くない場所に、
電気すらなく、昔ながらの生活をいまだに営んでいる村があると言う。

ひぇ〜アポロが月に降り立ってから数十年たったこの現代に、
先進国フランスにそんな村があるとは!まさにアンビリバブルである。

その情報が載っているアメリカの旅行ガイドブックを見せてもらった。
「場所は「アルル」と「カルカソンヌ」の間に位置し・・・」とある。
文明の利器を拒否し、昔ながらの生活を営む人々っていったい?!
アメリカのアーミッシュのような人たちなのだろうか?
う〜ん、興味深々だ。
よ〜し!!行こう!!

翌日、「カルカソンヌ」行きの列車に乗り込む前に情報を仕入れようと、
1時間半ほど早くホテルを出ることにした。
ホテルの支払いを済ませ、宿の主人に村の名を告げ、場所を知っているか尋ねた。
「いや〜そんな名前聞いたことないな。まって、地図で調べよう!」と、
折りたたみ式の南フランス全体を網羅している地図を、フロントのテーブルの上に広げた。

二人で地図を目を追うこと40分、 その村の名前に似た地名さえ見当たらなかった。
「駅のツーリストインフォメーションに行けば、地区ごとの詳しい地図があるよ。
そこに行って聞いたほうがいい」
と宿の主人は申し訳なさそうに言った。

早速ホテルを後にし、ツーリストインフォメーションに向かう。
40歳前後の女性係員に場所を告げると、アルルとカルカソンヌ間を網羅する、
先ほどホテルで見たものよりもより詳細な地図を出してきた。
地図の半分をお互いに分担し、目的地の地名を追い、
地図の端から端までくまなく探したが、まったくそれらしき地名はない。

「よほど小さな村なのね。地区毎の地図で調べましょう。 まずはアルルの西から」
とその係員はいい、私に地図を1冊渡し、自分も別の地図を開いた。
村の名の頭文字目で追いながら、ふと電車の出発時間のことが頭によぎった。
腕時計に目をやると、10時発のカルカソンヌ行きまであと10分しかない。
係員の女性に出発時間のことを告げようかと思い、ふと目をやると、必死になって地図に目を走らせている彼女の姿があった。

「言えない・・・こんなに一生懸命私の為に探してくれているのに・・」
次のカルカソンヌ行きは、3時間以上後である。
彼女の懸命さに職務以上の優しさを感じた私は、それを切り出すことが出来なかった。 仕方がない、次の列車で行こう。

再び地図に目を走らせ、村の名を追った。
地図の端から端まで調べたが、その名はどこにもない。
地図を閉じ、積み重ねた地図からまた新たな地域を取り出し、再び村の名を追う。
10数枚の地図を見終わったときは、もうすでにここに来てから2時間以上の時が経過していた。

さらに数冊の地図を調べたが、そこにもその名はどこにも見あたらず、
最後の地図を二人で両端から調べたが、結果は同様であった。
ふと時計を見るともうすでに3時間以上の時が経過しており、
次に乗る予定だった列車も先ほど発車しているので、また3時間待つことになるだろう。

係員の女性は「もうこれ以上探すものがないわ。見つけられなくて本当にごめんなさい」と 私に謝ってきた。
「いいえ、長い時間一緒に探してくれて本当にありがとう!!」と
私はまんべんの笑みを浮かべ、彼女にお礼の言葉を言い、インフォメーションを後にした。

もう幻の村はどうでもいい。
幻の村を求めて、必死に探した数時間、村を見つけることは出来なかったが、何か大切なものを得たような不思議な満足感に浸っていた。

宿の主人、そしてツーリストインフォメーションの女性。
二人は、私の為に大切な時間を割いて、地図から幻のような村を探すことに協力してくれたのだ。
そんな真心に満ちた優しさに触れただけで、私は十分満足であった。


ウイーン、ベルギーのブリュージュ、イタリアのフレンツェ等のツーリストインフォメーションで、辛辣にあしらわれた記憶がまざまざと蘇る。

燦々と輝く光溢れる地に育ったここプロバンスの人々は、その光に似た暖かいぬくもりに満ちた優しさで、 疲れた旅人の心を癒してくれる。

これは10数年以上前の話であるが、今はインターネットと言う検索には優れた利器が存在する。
もし、今ここでその名を検索にかければ、その所在地をつかめるかも知れない。
でも・・・、私はそれは決してしたくない。
私の中でいつまでも幻であってほしいのだ。

幻の村を探すことによって触れられた人の優しさを、いつまでも大切に自分の心の中に記憶として留めておきたいから・・・・。

教訓:
人が自分の為に必死に同じ目的に向かって協力してくれる姿は、
たとえそれが果たせずとも 、叶った以上の幸福感と満足感を得ることができる。
 

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