この王妃の紋章は、50億円をかけた歴史大作であり、絢爛豪華な宮廷で繰り広げられる愛憎劇である。 内容的には「中国版シェークスピア劇」といったところで、中国史上もっとも栄えた唐朝末期を舞台にしている。
監督は、「紅いコーリャン」、「初恋の来た道」などを初めとする中国映画の名作の数々、そして近年では「HERO」や、「LOVER」などアクション作品などで日本でも広く知られるようになった中国映画の巨匠チャン・イーモウ。
この王妃の紋章は、愛と憎しみそして権力を巡る戦いに「HERO」や、「LOVER」のようなアクションを織り交ぜたスケールの大きな宮廷史劇と言ったところだが、どちらかと言うと男性よりも女性受けしそうな作品である。
そして原題は「都を埋め尽くす黄金の鎧」と言う意味で、日本題名「王妃の紋章」とは大きく異なっている。
まるで少女漫画のようなタイトルで、男性や生粋のチャン・イーモウファンは一歩引いてしまいそうである。
確かに内容も男性より女性に受けるような作品であり、ある意味賛否両論に大きく分かれる作品ではないだろうか。
中国では「黄金」が今なお富の象徴として重要視されており、以前TVで香港の富豪の純金のトイレが紹介されていて、あまりの趣味の悪さに唖然とした覚えがある。
この王妃の紋章の中でも、富の象徴としてあらゆる物が黄金づくめであり、その黄金に青や赤や緑などの原色がアクセントとして加えられてお確かに豪華絢爛ではあるが、ある意味「キワモノ」である。
決して日本人は「この宮殿の住人になりたい」などとは誰しも思わないだろう。
しかし、その過激なゴージャスさは、映像においては存分に我々の目を楽しませてくれる。
この作品で見ものなのは、そうした豪華絢爛なセット、そして極めつけは驚くべきエキストラの数である。
紫禁城の広場に埋め尽くした菊の鉢植えや、目を見張るようなおびただしい人間の数には誰もが目をみはるであろう。
特に宮殿攻めの場面は圧巻である。
CG合成のようには見えないし、エキストラを使っているとしたら千人単位になるだろう。
金の甲冑の反乱軍と鈍く光るダークシルバーの反乱軍の構図は、敵味方が入り乱れた戦いで非常にわかり易く、そして金の艶やかさが、無彩色のダークシルバーによって際立ちそして全体の配色を落ち着かせる効果を担っている。
そして、興味深いのが女性の衣装である。
胸元は中国の伝統服とはかけ離れ、まるで18世紀のヨーロッパスタイルのよう。 コルセットで胸を強調したスタイルで、ある意味斬新なおかつ大胆なスタイルで非常にエロチックである。
このファッションで大勢の女官たちが立ち回る様は、男性なら目を奪われること至極!!(笑)
露出度が低い、本来の宮廷服とはかけ離れた大胆さが非常に面白い。
キャストは、中国を代表する二大トップスターコン・リーの王妃、チョウ・ユンファの王である。
コン・リーの役柄はそれほど新鮮味はないが、チョウ・ユンファの押さえた演技は要チェックである。
この作品は確かに巨費を投じて豪華絢爛な歴史絵巻ではあるが、私としては1980年代〜1990年代に製作されたチャン・イーモウ監督作品の方が好きである。
味わいのあるキメ細やかな過去の作品から、エンターティメント性の強い娯楽作品色が強くなった近年の作品は 何かが彼の作品から失われたような気がしてならない。
今一度「紅いコーリャン」や「菊豆」、「初恋のきた道」等の素朴だが中国の原点を感じさせるような作品が見てみたいものだとつくづく思う。
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